ワインの銘醸地フランス・ボルドー地方を代表する葡萄と言えば、カベルネ・ソーヴィニヨン。その親品種であるカベルネ・フラン。そしてメルロー。ワインをあまり飲まれない方でも耳にしたことはある、超有名品種ですね。
それでは「カベルロ」という葡萄はいかがでしょう?
何だかカベルネとメルローを掛け合わせたような名前…そう思った方は大正解!
今回はこのミステリアスな葡萄カベルロと、それを世界で唯一栽培しているトスカーナの個性派造り手を紹介したいと思います。
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カベルロが初めて確認されたのは、1960年代末のイタリア・ヴェネト州。パドヴァ近くの放棄されたぶどう畑で、イタリア人農学者 レミッジョ・ボルディーニにより特定されたクローンです。感覚的にはカベルネ・フランに近いとされながらも、品種学的な特徴はメルロー寄りで、この2種の自然交配により生まれたものではないかと考えられています。
このミステリアスでカリスマ的な葡萄のポテンシャルをいち早く感じ取ったのが、ウルフ・ロゴスキーとベッティーナ・ロゴスキー夫妻。彼らは1980年代に、トスカーナ州ヴァルダルノ・ディ・ソプラの人里離れた丘の上でカベルロの栽培を試み、ワイナリー ポデーレ・イル・カルナシャーレを立ち上げました。
1986年、200年以上にわたってオリーブしか栽培されていなかった南東向きの岩だらけの斜面に、0.3ヘクタールのカベルロの畑が誕生。その後、異なる土壌を持つ複数の畑でも栽培を試み、現在総面積は約4.8ヘクタールあります。
ウルフ・ロゴスキー亡き後も、その意志を継ぐ息子のモーリッツ・ロゴスキーが、母ベッティーナ、娘のカルラ・エレ、オノロジスト兼テクニカルディレクターのマルコ・マッフェイらのと共にワイナリーを運営しています。
カベルロを世界で唯一栽培しているポデーレ・イル・カルナシャーレは、自身の立ち位置を「オートクチュールのようなワイナリー」と評するだけあり、細部にまで極限の注意を払い、品質向上のために精密な職人技を注ぎ込みます。
土壌とそこに暮らす生態系を尊重し、畑作業は完全に手作業。季節の特性をよく考慮し、剪定、つぼみや葉の状態など細かく管理しています。化学肥料・除草剤・農薬はもちろん不使用。人の手の介入が必要な場合には、自然で有機的な健康管理処置のみを行い、土壌は部分的な緑化が行われる場合にのみ耕作されます。
醸造においても人の手をかけないワイン造りを信条とし、果実、ヴィンテージ(収穫年)、そして各畑の特徴が主役となるよう努めています。ワインに求めるのはエレガンス、香りの精度、そしてダイナミックな緊張感。
木樽で22か月じっくり熟成されたカベルロのワインは、瓶詰め前に各樽ごとにテイスティングが行われ、最も複雑で構造的で、豊かな香りを持つワインは「IL CABERLOT(イル・カベルロ)」※1 と名付けられ、更に14か月の瓶内熟成を経てリリースされます。一方、早い段階から楽しめると判断されたカベルロワインは「CARNASCIALE(カルナシャーレ)」と名付けられ、6か月の瓶内熟成を経てお披露目となります。
イル・カベルロは、権威あるワイン評論家アントニオ・ガッローニ氏が自身のワイン評価サイト「ヴィノス」で昨年100点をつけたパーフェクトワイン。
2019年ヴィンテージも高評価を得ており、飲み頃は2025年から2039年までとされ、熟成の楽しみもあります。イル・カベルロは個人のお客様向けに販売できる本数が限られていますので、気になる方は是非お早めに!
※1「IL CABERLOT(イル・カベルロ)」の個人向け販売はマグナムボトル(1500ml)のみ