ブーツの形をしたイタリア本土の中心に位置する、海のない州ウンブリア。首都ローマのあるラツィオ州や、華やかなトスカーナ州に囲まれ、若干地味な印象がぬぐえませんが、雄大な自然に抱かれ、多くの重要な宗教的建築物や聖地を持つ、重みと深みのある州です。
州都がペルージャ、と言うとサッカーファンはピンとくるかもしれませんね。世界遺産にもなっているカトリックの巡礼地アッシジや、オルヴィエート、グッビオなど、中世の面影を色濃く残した美しい街々も一見の価値があります。
このウンブリア州で最も重要視されている土着品種こそ、私が愛してやまない黒葡萄、サグランティーノです。その名は「神聖」を意味するラテン語 Sacer に由来し、中世以降には修道士達が宗教儀式のためにサグランティーノを栽培し、甘口のパッシートワインを作っていたことが分かっています。一般家庭においても、イースターやクリスマスなどキリスト教の祝祭日に飲まれてきた特別なワインです。
サグランティーノの原産地は州都ペルージャ県の東部にある丘陵地帯、モンテファルコ。ここで造られるサグランティーノ100%のワインがモンテファルコ・サグランティーノと呼ばれ、1992年にDOCGに昇格しました。
ちなみにモンテファルコにはワインツーリズムの一環として、サグランティーノの栽培地や地元ワイナリーを巡りながら、その歴史や味わいを学べる「サグランティーノの道」(La Strada del Sagrantino) という観光ルートが設けられています。ワイン好きにはたまらないですね!
ではモンテファルコ・サグランティーノDOCGの味わいはというと、とにかく
濃厚!そして声を大にして伝えたいのが、
非常に良質なポリフェノールを多く含有している点。その
抗酸化力の高さはカカオが持つポリフェノールにも劣らないとも言われています。(健康に良いとはいえ、もちろん飲みすぎはNGです!)
バローロを生み出すネッビオーロや、カベルネ・ソーヴィニヨンを凌ぎ、
世界で最もタンニンを多く含む黒葡萄であるサグランティーノ。こう聞くと何だか苦そうで、少し飲みにくい印象を持ちますよね。実際、この強すぎる個性ゆえに辛口のサグランティーノは好まれず、長らく甘口のサグランティーノ・パッシートが主流でした。
しかし醸造技術の向上と長期熟成型ワインの需要の高まりと共に、地元の造り手達は上質な辛口サグランティーノを精力的に生み出し、世界的に認められる
パワフルかつエレガントなフルボディへと押し上げることに成功しました。
モンテファルコ・サグランティーノDOCGは、昔からの伝統を受け継ぎ、ワイン造りに非常に厳格な規制を課していることで有名です。
葡萄の栽培エリアも生産量も制限されているため、市場に出回るモンテファルコ・サグランティーノDOCGの本数は限られており、更にその中から飲みやすい1本を探すのはなかなか至難の業。
そこでご紹介したいのが、我らが
ヴァルダンジュスです。
モンテファルコの丘陵地帯や周辺の風景を一望できるサン・マルコにあるヴァルダンジュスは、アントネッリ家が家族で営む自然派ワイナリー。
規模の小さな生産者ゆえに年間生産本数も限られ、価格は少し割高に感じるかもしれません。しかし一度味わってみると、そのコストパフォーマンスの高さに気付いていただけるはずです!
熟したプラムやブラックベリーの少し甘くフルーティーで華やかな香りと、非常にバランスの取れたストラクチャー、質の良い滑らかなタンニンを豊富に持った長期熟成型。パワフル&エレガントなフルボディを愛する方ならば、きっと気に入っていただける、と自信を持っておすすめできる1本です。是非お試しください!