「カベルロ」という聞き慣れない品種。これは1960年代末にヴェネト州パドヴァ近くの放棄されたぶどう畑で、イタリア人農学者レミッジョ・ボルディーニにより初めて確認されたクローンです。感覚的にはカベルネ・フランに近いとされながらも、品種学的な特徴はメルロー寄りで、この2種の自然交配により生まれたものではないかと考えられています。
このミステリアスでカリスマ的な葡萄のポテンシャルを感じ取ったウルフ&ベッティーナ・ロゴスキー夫妻は、1980年代にトスカーナ州ヴァルダルノ・ディ・ソプラの人里離れた丘の上でカベルロの栽培をスタート。現在はウルフの意志を継ぐ息子のモーリッツ・ロゴスキーが、母ベッティーナ、娘のカルラ・エレ、オノロジスト兼テクニカルディレクターのマルコ・マッフェイらのと共に運営しています。
カベルロを世界中で唯一栽培しているポデーレ・イル・カルナシャーレは、自身の立ち位置を「オートクチュールのようなワイナリー」と評するだけあり、何よりも品質を重視し、栽培から醸造に至るまで一切の妥協を許しません。
土壌とそこに暮らす生態系を尊重し、畑作業は完全に手作業。季節の特性をよく考慮し、剪定、つぼみや葉の状態など細かく管理しています。化学肥料・除草剤・農薬はもちろん不使用。人の手の介入が必要な場合には、自然で有機的な健康管理処置のみを行い、土壌は部分的な緑化が行われる場合にのみ耕作されます。
醸造においても人の手をかけないワイン造りを信条とし、果実、ヴィンテージ(収穫年)、そして各畑の特徴が主役となるよう努めています。ワインに求めるのはエレガンス、香りの精度、そしてダイナミックな緊張感。
木樽で22か月じっくり熟成されたカベルロワインは、瓶詰め前に各樽ごとにテイスティングが行われ、最も複雑で構造的で、豊かな香りを持つワインは「IL CABERLOT(イル・カベルロ)」と名付けられ、更に14か月の瓶内熟成を経てリリースされます。
一方、早い段階から楽しめると判断されたカベルロワインは「CARNASCIALE(カルナシャーレ)」と名付けられ、6か月の瓶内熟成を経てお披露目となります。