イタリア最北端、スイスとドイツと国境を接する州、トレンティーノ=アルト・アディジェ。雄大なアルプス山脈を背に、見事な葡萄の段々畑を抱く美しいチェンブラ渓谷に、小さなワイナリー「ヴィラ・コルニオーレ」はあります。
造り手であるペレグリーニ家は、何代にも渡り葡萄を地元の協同組合へ供給してきましたが、自分達のワイン造りを探求するため20年前に独立。今は3人娘のサラ、リンダ、サビーナが、父オノリオと母マッダレーナの助けを借りながら、家族でワイナリーを営んでいます。
そう、なんとヴィラ・コルニオーレは、造り手5人中4人が女性。しかも所有する約10ヘクタールの葡萄畑の大部分は、傾斜が急な渓谷内にあるため、栽培から収穫まで全て手作業となり、仕事場は想像以上に過酷を極めます。
それでも彼女たちが誇らし気な笑みを浮かべるのは、このチェンブラ渓谷が比類ないブドウの品質を生み出すことができる、とっておきな場所であることを知っているから。典型的な高山気候であるチェンブラ渓谷は昼夜の寒暖差が激しく、ヴィラ・コルニオーレのワインの非常に重要なエレメントである、洗練された上質な酸味を生み出すことができるのです。
ヴィラ・コルニオーレのモットー、それは愛する故郷をワインで表現すること。そのためにも、チェンブラの豊かな天然資源や生態系に影響が出ないよう有機栽培を行い、自然とのベストバランスを崩さないようにと常に360度目を配り、持続可能なワイン造りを日々模索しています。
その工夫は随所に見られますが、例えば天然の洞窟の中に設えられた樽熟成用のセラー。冷涼な気候がもたらす最適な温度、そして剥き出しになった斑岩(はんがん)から自然発生する湿度を利用することで、エネルギーの大幅な節約に取り組んでいます。この自然と一体化した静かな空間でワインは休息し、お披露目の日を待つのです。