トスカーナ中南部の町モンテプルチアーノにある「モンテメルクーリオ」は、アンセルミ家が経営する小さなワイナリー。一家のワイン造りは、1958年にアダモ・アンセルミがサンジョヴェーゼを植えたことに始まります。
長らく地元の協同組合に販売する形でワインを生産していましたが、2007年に一家のワインブランドを立ち上げることを決断。19歳からワイン造りを続けているアダモの孫マルコが、現在はワイナリーを率いています。
モンテメルクーリオの哲学は、果実本来の味わいを保ち、家と故郷の地の伝統に則って加工を進めること。手作業による収穫、発酵段階、そして大樽で行われる精製まで、生産段階の一つ一つ無限の注意を払います。
モンテメルクーリオでは設立当初から規定に沿った有機農法を取り入れていますが、これも偉大な祖父アダモの「自然が私たちに提供するものを最大限に維持するべき」という強い信念が代々受け継がれているからこそ。
細やかな目配り・気配りによって、あらゆる味のニュアンスが高まり、味わいが標準化されることなく、モンテプルチアーノ本来の風味を最大限に引き出すことができるのです。
この町の名を冠したヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノは、知名度こそキャンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノには及びませんが、負けず劣らずの最高品質を誇り、8世紀にはすでに認識されていた由緒ある赤ワインです。
モンテメルクーリオのノービレは「メッサジェッロ」と名付けられていますが、その由来は神話において神々の伝令役だったメルクリウス(ヘルメース)。そう、エチケットにいる彼です。キャンティともブルネッロとも異なる、ノービレ独特の気高く深みのある味わいを世界に届けたいという願いがこめられています。