ピエモンテを代表する銘醸地ロエロの中心部。美しい中世のお城を囲む小さな町ポカパーリアにティバルディ家は暮らしています。曾祖父の代からワイン造りを営み、収穫時には家族全員で喜びを分かち合ってきた仲の良い一家。今、この家族を率いているのは若き姉妹モニカとダニエラです。
祖父トゥニンと父ステファノの元でワイン造りのスキルを磨き、実践を積んできた姉妹は、2014年に独自のワインブランド「ティバルディ」を立ち上げました。世代を超えて受け継がれた、ワイン醸造学と伝統的なセラー技術の知識。そして故郷の土地・葡萄・そこに暮らす全ての生態系に対する愛情。それらが先進的な技術と組み合わされ、ティバルディはロエロの特徴を完璧に表現したワインを生み出すことに成功しました。
バローロやバルバレスコで有名なランゲ地区に比べ、タナロ川を隔てて対岸にあるロエロ地区は砂を多く含む土壌が大きな特徴で、繊細でニュアンスのあるタンニンを含む柔らかいワインを生み出します。
ティバルディ家はこのエリアに計7ヘクタール、3つの葡萄畑を持っていますが、それぞれ土壌は全く異なります。
いずれも砂の割合が高めですが、その中でもタナロ川に近く比較的石灰が多い畑ではロエロ・ロッソを栽培し、エレガントなタンニンが魅力のロエロDOCGを造っています。
一方、飲みやすさ抜群のランゲDOCネッビオーロを生み出す2番目の畑は砂・粘土・石灰のバランスが非常に良く、同じネッビオーロから驚くほど異なるキャラクターを引き出します。
そして砂の割合が35%と最も多い3つ目の畑は白葡萄の栽培向き。ティバルディの代名詞でもあるロエロ・アルネイスは3つの畑のアルネイスをブレンドして造られますが、内75%がこの砂質の畑育ちです。
これらを飲み比べると、いかにティバルディが土壌の違いをワインで表現することに長けているか、きっと驚くことでしょう。
有機認定を受けているティバルディの葡萄畑では、野草や他の植物を自由に成長させることで畑が自己調節し、葡萄の木が自分で自身を保護できるような環境造りに取り組んでいます。人間がすることは非常に限られていて、例えば湿度が葡萄の木の成長を妨げるレベルを超えないよう草の管理をしたり、葡萄の品質を高めるために生産量を調整するなど、最低限の介入のみ。
こうして造られた最高品質の葡萄は、9月に注意深く選別されながら全て手摘みで収穫され、ロエロの風土を色濃く反映したビオワインへと生まれ変わっていくのです。